Q&A集
遺産分割協議とは何ですか?
不動産の相続税評価額の計算方法を教えてください。
土地の相続税評価額の計算方法は、路線価のある土地かどうかで異なります。 路線価のある土地の場合は路線価方式で、路線価のない土地の場合は倍率方式で、以下の数式で計算します。
路線価のある土地(路線価方式)
相続税評価額=路線価×面積(㎡)
路線価のない土地(倍率方式)
相続税評価額=固定資産税評価額×倍率(倍率表より)
建物の相続税評価額の計算は、シンプルで固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。
建物の相続税評価額=固定資産税評価額×1.0
以上は土地、建物を自己利用している場合です。 土地、建物を賃貸している場合には、借地権割合、借家件割合分の評価を減額することができます。
<賃貸不動産の場合>
貸地評価=土地の相続税評価額×(1-借地権割合)
貸家評価=建物の相続税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
貸家建付地評価=土地の相続税評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
相続放棄をするためにはどうしたらいいですか?
相続放棄は、3カ月以内に家庭裁判所に申述をしなければなりません。また、もう一つの注意点としては、相続財産の一部でも処分してしまっていると、相続した事を承認(単純承認)したとみなされて相続放棄ができなくなります。例えば、相続登記(不動産の名義変更)をすると相続放棄はできません。処分には相続財産の売買・贈与など法律上の処分行為だけでなく、損壊・破損など事実上の処分行為も含まれます。
相続放棄をしたい場合は、相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に家庭裁判所で申述が受理されなければいけません。必ずしも被相続人が亡くなったときからではなく、相続人が被相続人が亡くなったことと、自分に相続権があることを知ったときから3ヵ月です。事情がある場合は、この期間を延ばしてもらうこともできます。期間内であってもいったん相続放棄の申述が受理されると、詐欺・強迫等による場合でない限り後から取り消すことはできないため、選択する際には熟慮が必要です。 なお、相続放棄をするとその相続人は初めから「相続人とならなかったものとみなされる」ため、その子や孫が代襲相続することもできない点は注意が必要です。
手続きの概略としては、申述書を戸籍謄本などの添付書類とともに被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。共同相続人の全員が共同して行う限定承認とは違い、相続放棄は各相続人が単独で申請可能です。先順位の相続人が全員相続放棄することにより、遡って次順位の者が相続人になることがありますので(例:子が全員相続放棄し、親が相続人になる)、注意が必要です。
公正証書遺言に必要な書類は何ですか?
1.遺言者本人の本人確認資料
2.遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
3.財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票(法人の場合には資格証明書)
4.財産の中に不動産がある場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
なお、遺言者が証人を連れて行く場合は、証人の氏名、住所、生年月日、職業が必要になります。証人を同行できない場合は、公証役場で手配してもらうこともできます(有料です)。
親がなくなった場合は何からすればいいんでしょうか?
被相続人が死亡したら、7日以内に医師による死亡診断書を添えて市町村役場に死亡届を提出します。その後相続人の確定と財産の確定をします。戸籍から相続人を確認し、通帳や口座から財産を確定します。口座が見つけれなければ、そのままになってしまいます。相続放棄や限定承認をする場合は期限があり、亡くなってから3か月以内に手続きをしなければいけません。
所有権放棄をしたい場合はどうしたらいいですか?
土地の所有者が亡くなり相続が発生した場合、相続人全員が相続放棄をすると土地の所有者はいなくなります。民法上「所有者のない不動産は、国庫に帰属する。」と規定されています。
ただし相続放棄をしたらその時点から自動的にその土地が国の財産となり、責任から解放されるわけではない点に注意が必要です。
相続放棄をした後も、その放棄によって相続人となった者が管理を始めるころができるまで、管理義務は継続します。
全相続人が相続放棄をした場合には、利害関係人または検察官により請求がなされれば、家庭裁判所が「相続財産管理人」を選任し、相続財産管理人が次の管理者となります。 これによってようやく、土地の管理義務から解放されることになります。
相続放棄手続き及びこの相続財産管理人選任の申し立てには、数十万円以上の費用が必要となります。
現実的にはこの負担が厳しいため、結局相続するしかなく、固定資産税の支払いと維持管理を続ける人が多くなっています。
認知症は誰が判断するのでしょうか?
認知症の診断は医師が行います。
ただし、例えば不動産取引においては、不動産会社と司法書士が本人確認法にもとづいて本人の意思能力を確認します。場合によっては医師から認知症の診断が出ていなくても、意思能力が確認できず取引できない場合があります。
相続人の中に行方不明者がいる場合はどうしたらいいでしょうか?
相続人の中に行方不明者がいる場合は、遺産分割協議を行うことができません。
遺産分割協議を進めるには、家庭裁判所に「不在者財産管理人選任申立て」をして、選任された不在者財産管理人が行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加し、遺産分割を進める必要があります。
そのほか、「失踪宣告」を得て相続人が死亡したこととみなす方法もあります。失踪宣告とは,生死不明の者に対して,法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、又は戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)、申立てにより、家庭裁判所は、失踪宣告を行います。失踪宣告を受けた者は、普通失踪の場合7年間の期間が満了したときに、危難失踪の場合危難が去ったときに、死亡したものとみなされます。
失踪宣告を受けた相続人が被相続人の相続開始時にすでに死亡していたものとみなされる場合、その子がいれば代襲相続人となります。
認知症になった後なんですが、物件を売却したい場合どうすればいいでしょうか?
不動産取引については、本人確認法によって不動産会社と司法書士が本人の意思確認し判断しますので、ご本人の意思確認が出来ない場合は、物件の売却は相続がおきて所有者が変わるまでできません。
ただし、成年後見人をたてることは可能です。成年後見人をたて、家庭裁判所から売却の許可が出れば売却は可能です。
法定後見制度を使う場合に、全く知らない人が後見人になることはあるんですか?
あります。
決めるのは家庭裁判所です。法定後見制度とは、認知症や知的障害などで判断能力がない、もしくは不十分な人を、家庭裁判所に選ばれた親族や弁護士などが支援する制度です。
成年後見人を選任する時の注意点は利益相反しないようにすることです。たとえば、遺産分割協議のために成年後見人を選任させるのであれば対象相続とは関係ない立場にいる親族や、まったくの第三者を選任してもらわなければなりません。
二次相続とは何ですか?
二次相続とは、最初の相続(一次相続)で残された配偶者の死亡時に起こる相続のことを言います。
例えば、両親のうち父が先に死亡した場合、父の死亡時に発生する相続が一次相続、そしてその次に母が死亡した際に発生するのが二次相続です。一次相続から二次相続までが10年以内の場合は、相続人の負担を軽減する制度として「相次相続控除」というものがあり、後の相続における相続税額から前の相続における相続税の一部を控除することができます。しかしながら、一次相続時は「配偶者の税額控除」により家族全体に係る相続税額を大きく軽減できるものの、二次相続では大きな相続税の軽減措置が無いため、家族全体に係る相続税額が大きくなる可能性があります。
一次相続だけではなく二次相続まで考えた相続対策を専門家に相談することをお勧めします。
みなし相続財産とは何ですか?
みなし相続財産とは、被相続人が相続開始時に所有していた財産ではないが、被相続人の死亡を原因として支払われるもので、実質的には被相続人が相続開始時に所有していた財産と同一視して相続税の課税対象となるものをいいます。具体的には、生命保険金、死亡退職金、功労金、弔慰金、個人年金等を指し、各々課税価格の計算方法や非課税限度額の計算方法等が決まっています。みなし相続財産として代表的な「生命保険金」や「退職金」の非課税枠は下記のとおりです。
「500万円×法定相続人数×その相続人の取得した保険金等の合計額/相続人全員の取得した保険金等の合計額」
相続登記や遺言書作成を自分ですることは可能ですか?
相続登記も遺言書作成もご自身で行う事が可能です。
相続登記は、登記申請書に遺言書や作成した遺産分割協議書、必要書類を添えて管轄の法務局で申請して行うことができます。ただし、相続人全員の押印や戸籍の収集等多くの手間と時間を要するため専門の司法書士にご依頼されることをお勧めします。
遺言書は、代表的なものに「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がありますが、いずれも遺したい内容については自分で考えて作成することが可能です。両者はその作成形式が異なり、「自筆証書遺言」は原則全てを自書により作成するのに対し、「公正証書遺言」は、公証役場で公証人によって法律的な不備の有無を確認したうえで公正証書として文面化され、保管されます。「自筆証書遺言」の場合には、書き方に不備がある場合などは効力が生じないものとなってしまうため、注意して作成することが必要です。なお、どちらの場合も、遺す内容が本当に自身の思いを叶えるためのものになっているかどうかは、財産内容の分析等をしたうえで考える必要があります。
そういった意味で、相続財産の遺し方を正しくアドバイスできる専門家に相談のうえ作成内容を検討することをお勧めします。
代襲相続とは何ですか?
代襲相続とは、相続人となるべき者が①被相続人の前に死亡②相続欠格③相続廃除の3つの原因のいずれかにより相続権を失う場合に、その者の子がその者の代わりに相続人になることをいいます。尚、代襲相続する者を「代襲相続人」、代襲相続される者を「被代襲者」といい、相続放棄をした者には、代襲相続は生じないため、その者の子には代襲相続権がありません。代襲相続が生じる者は、①被相続人の子と②兄弟姉妹です。
①第1順位である子の代襲相続は、被相続人の孫や曾孫に無制限に引き継がれます。一方で、②第3順位である兄弟姉妹の代襲相続は、その者の子に限り生じますので被相続人の甥や姪までしか認められていません。
尚、配偶者や直系尊属について代襲相続は認められていません。
遺留分減殺請求とは何ですか?また、具体的にどのように請求したら良いでしょうか?
相続人の遺留分を侵害して行われた遺贈や贈与、相続分の指定は当然に無効とはなりませんが、相続開始後に相続人が受け継いだ相続財産が自己の遺留分に満たないとき、その遺留分の額に達するまで遺留分を侵害する遺贈や贈与の効力を否認することが出来ます。これが遺留分減殺請求で、遺留分権利者が行使することのできる権利です(民法1031条)。また、遺留分権利者だけでなく、その相続人や遺留分権利者から相続分を譲り受けた承継人も行使することが出来ます。尚、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間これを行使しなかったときは時効により消滅します(消滅時効)。また、このような事情を知らなかったとしても、相続開始の時から10年を経過したときは権利が消滅します(除斥期間)。遺留分減殺請求を行うにあたっては、少なくとも相続人の人数とだれが相続人か、そして相続財産を把握し、合わせて各相続人の相続分とその遺留分を把握する必要があります。そのうえで、遺留分侵害者に対して請求をすることになります。請求の手続きは、法律上特別な方法が求められてはいませんが、遺留分権利者と相手方の間で交渉するのが一般的です。通知方法は、消滅時効や除斥期間にも関係するため口頭ではなく内容証明郵便で行いましょう。請求書の郵送後、相手方と交渉し相互の合意が得られれば和解書もしくは合意書を作成し可能であれば公証役場で公正証書にすると後の争いを防ぐために有効です。裁判外の交渉で合意が得られない場合は、裁判手続きを通じての請求を行う事になります。これを「遺留分減殺による物件返還調停」と言い、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に調停申立書を提出し申立てをすることによって開始されます。
なお、2019年7月1日施行の民法相続法改正により、遺留分減殺請求権を、物権的請求権ではなく、侵害額に相当する金銭債権の請求権とする抜本的改正がされます
親が亡くなったら、預貯金の引き落としはできないのですか?
預貯金については、2016年12月の最高裁の判決により「相続された預貯金は遺産分割の対象となり、遺産分割が終了するまでの間は、相続人全員の同意がない限り、相続人単独での払戻しは原則できない」とされました。これにより、相続債務の弁済や相続人の生活費、被相続人の葬儀費用など、緊急の払出しが困難となっていました。
しかしながら、上記のような事情を考慮して2019年7月1日の相続法改正により、「相続された預貯金について、相続人全員の同意が無くても、遺産分割協議前に払戻し(仮払い)が受けられる制度」が新設され、次の二つの手続きによって預貯金の払戻しができるようになりました。
(a)家庭裁判所の手続き(保全処分)を利用する方法
(b)裁判所外での相続人単独での払戻しを認める方法
(a)の方法は、仮払いの必要性があると認められる場合、他の共同相続人の利益を害さない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められます。家庭裁判所に遺産分割の審判の調停を申し立てたうえで、預貯金の仮払いの申立てをする必要があり、(b)と比較するとコストや時間がかかるというデメリットがあります。他方で、引き出し額に上限は設けられていないため、(b)の上限を超える金額の払戻しが必要になる場合には適しているといえます。
(b)の方法は、相続人が金融機関の窓口で直接払戻しを求める方法です。仮払いの必要性も要求されず、裁判手続きも不要なため、(a)に比べて簡便ですが、他方で、仮払いの金額に上限が設けられており、葬儀費用などの緊急性の高い費用を払い戻す際に有効です。尚、仮払いの上限額は次の式で計算し、仮払いを受けた場合は、その金額分を遺産分割の際に具体的な相続額から差し引かれます。また、金融機関が複数あれば、それぞれ引き出すことができます。
「相続開始時の預貯金債権の額(口座基準)×3分の1×(仮払いを求める相続人の)法定相続分」且つ「債務者(金融機関)ごと(複数の口座がある場合は合算)に150万円まで」